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想像力を働かせて、テレビと付き合ってください
犬と猫の話からテレビニュースの嘘について話そうと考えてみたこのコーナーもついに最終回になりました。 あまりにもわかりやすく単純にレッテル貼りをして分類化する、という考え方はテレビの本質に関わることだ、と僕は考えてこのコーナーを始めました。まあ、もっと言ってしまえば、それは人間の本質に関わることですよね。 人間はレッテル貼りがけっこう好きだし、テレビもレッテル貼りが大好きだから、そういう意味で、テレビというメディアは逆に「人間」を描くことに優れたメディアであるという褒め方もできるわけです。 でもやっぱり、それと同時にというか、だからこそ、テレビはものすごく間違いを犯しやすいメディアであることも確かだと僕は思うのです。
千葉のタッキー5号さんの驚きのテレビ体験は実に象徴的な出来事です。ある番組の収録当日にいなかった司会進行役が、実際の放送ではあたかもその場にいるように編集されていたそうですが、これは相当にむちゃくちゃですよね。 犬と猫のインタビューと似たような話をひとつ。 ある日、中日巨人戦があったとして、12対2で中日が勝ったとします。これをニュース番組で1分のVTRに編集したとします。巨人が2点入れたシーンを中心に編集していけば最初の50秒まで、ああ巨人が勝ったんだな、と皆さんは思い込むわけです。 ところが51秒目に、お通夜のような暗いトーンのアナウンサーのこんな言葉が耳に飛び込んできます。「しかし……」。最後の結論はこうです。「中日の圧勝でした」。え? え?そうだったの? テレビの世界においては、そんな作為的編集をすることもすごく簡単なことなのです(実際はしませんけれどね)。 たとえば、あなたは新聞の活字はにわかには信じられなくても、テレビの生中継やVTRで映されている実際の現場をテレビ画面で見ることができれば、それは真実である、というふうに思うでしょうか。 僕はそれは事実の一断片であるとは思いますけれど、すべての真実が生中継やVTRの中にあるかと言うとまったくそういうものでもなく、そこにある真実を読み解くのは、結局は現場にいる人間やそれを見ている人たちの想像力だ、と思うのです。想像力だけが、これからのテレビを救うといってもいい、とさえ僕は思っているのです。 もっと言えば、事件の被害者や加害者や目撃者でさえ、その事件の真実がどこにあったのかまったくわかっていない、ということさえあるのですから。 話が少々理屈っぽくなってきました。 僕が皆さんに少しでも伝えたいと思ったのは、テレビもテレビニュースもそういう不完全な営みの中から生まれてくるものなのだ、ということです。決して開き直りではなく、テレビというのは得意な分野と不得意な分野がはっきりしている、意外に不完全なメディアなのだ、ということなのです。 そんなことを少し知ったうえで、皆さんの想像力を働かせてテレビと付き合う、ということは、あまりにも情報の溢れすぎた世界の中で、溺れないための確かな力となるはずです。 それでもテレビにはいいこともたくさんあるし、テレビだってまだまだ捨てたものじゃない、と僕は思っています。これからのテレビニュースは「正直さ」や「誠実さ」がキーワードになると考えていますし、ただただ扇情的に面白おかしく放送して、視聴率さえよければいいんだ、なんていうスタッフはむしろ少ないのが実態です。 というわけで1週間付き合ってくださった皆さん、ありがとうございました。ほんのちょっとでもテレビの裏側を知ってもらえたのなら、それだけでいいような気もします。 もし報道ステーションのスタッフが街角であなたを突然捕まえて「あなたは犬が好きですか? 猫が好きですか?」と尋ねてきて、もしあなたがその時約束に遅れそうでなかったら、ちょっと立ち止まって、あまり気構えずに正直に本音を普通に答えてください。その答えはきっと短くはなるけれど、「猫が好き!」あるいは「犬が好き!」あるいは「アリクイが好き!」というメッセージが、あなたの表情や喋り方やニュアンスと一緒に、けっこういろんなものを伝えると思うのです。テレビってそういうメディアです。 ちなみに僕は犬も猫も両方とても好きですが、今、僕の身近に小さな猫がいたりするので、「猫」と答えると思います。 |
『報道ステーション』チーフディレクター |
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